ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2018.3.14 03:17

『1984年』

あまりにも有名なディストピア小説、

ジョージ・オーウェルの『一九八四年』。
以前から気になっていたのですが、

先日やっと読了しました。

 

「オセアニア」という国が舞台。

この国は「党」がすべてを牛耳る全体主義国家。

そこで暮らす人々の姿が描かれています。

おそらく10年前に読んでいてもピンと来なかったでしょう。

もしかしたら「あまりに非現実的」と一笑に付して

終わっていたかもしれません。

でも今なら、全体主義国家の行き着く先、

その恐ろしさが伝わってきます。

 

オセアニアでは、「ニュースピーク」という
単純化した言語が開発されます。
言語は思考や概念と直接結びつきますから、
単純化すればするほど、思考も単純化する。
また24時間365日、「テレスクリーン」によって
監視されています。どんな不穏な動きも見逃しません。
そして党の三つのスローガン・・・。
「戦争は平和なり」
「自由は隷従なり」
「無知は力なり」
じつに恐ろしい愚民化政策。

そして、まずもってリアリティを感じるのは

「過去の書き換え」です。

 

何らかの都合で、我が国はA国と戦争していると
党中枢が発表すれば、

昨日までB国と戦争していたはずなのに、

これまでずっとA国と戦争していたことになる。

なぜなら党は無謬の存在だから。

あらゆる過去の文書は、すべて“改ざん”される。

我が国はずっとA国と敵対していた、というように。

ちなみにこうした仕事を行っているのは「真理省」です。

 

「え、B国との戦争はどうなった?」などと

疑問を呈してもいけない。

そういう人間は即刻「抹消」されます。

その存在さえなかったことになる。

そういう人はもちろん拷問されるわけですが、

これを担当するのは「愛情省」・・・。

 

要するに全体主義国家においては、

過去は変えられる

のです。

そのことを考えれば、森友文書は

「些末なこと」でもなんでもない!

「あってはならないこと」です。

 

また「内心の自由」まで監視されることの恐ろしさも

ひしひしと感じました。

読了した日の夜、私は夢の中で安倍政権を批判し、

それが寝言になって出てしまい、翌日拷問されるという

夢をみてしまったくらいです。

自分の心に、自分の本能に、ウソをついて、

そのことさえもきれいサッパリ忘れてしまえる、

あるいは自分にウソをついたことを肯定的に捉えるよう

必死に訓練をして打ち勝つ(党ではこれが「正統」となる)。

遠い未来から日本を見たとき、もしかしたら「共謀罪」は、
そうしたことを私たちに強要する「はじめの一歩」
だったということになるのかもしれません

 

小説の中で、人々はただ盲目的に党を信じ、

どんなにイカレたスローガンも、

ばかばかしい行事も、率先して参加します。

そこに疑問を抱く主人公の行き着く先は・・・・。

私たちは実際の1984年を知っています。
オーウェルが描くディストピアは、少なくとも
日本では誕生しませんでした。
けれど、今の日本を見ると、いつそうなっても
おかしくないと思ってしまいます。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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